産後に起こりやすい「恥骨痛」
出産直後はとくに、「激痛で歩けない」「痛くて、あぐらをかくのがつらい」といった
恥骨あたりの痛みに悩まされることがあるかもしれません。
「恥骨痛」は、何が原因で起こるのでしょうか。
左右の恥骨が離れることで痛む
「恥骨痛」とは文字通り、「恥骨(ちこつ)」という骨のあたり、
ちょうど陰部の上にある骨周辺が痛むことをいいます。
恥骨とは骨盤を構成する骨のひとつ。恥骨は左右にひとつずつあり、
骨盤の前側で軟骨(靭帯)によりつながっています(恥骨結合)。
ホルモンの影響で恥骨をつなぐ部分がゆるむ
お産が近づいた妊婦さんや産後の女性などは、恥骨痛を感じることがしばしばあるようです。
恥骨痛は、左右の恥骨をつないでいる「恥骨結合」が開くことによって起こります。
恥骨結合は通常時は閉じていますが、お産の間際やその最中には、「リラキシン」という
関節や靱帯をゆるませるホルモンの働きでゆるみやすくなっています。
結合している左右の恥骨間の距離はもともと2~3mmですが、
産道を通る赤ちゃんの頭に押されることなどにより、
出産直後には7~8mmほどにまで広がります。
妊娠中にもジワジワと左右の恥骨の間は開いていきますが、
出産時には骨盤の中を赤ちゃんが通っていけるよう普段の倍以上にまで急激に開くため
恥骨同士をつないでいる靭帯が傷つき、痛みを起こすのです。
産後の恥骨の痛みについては個人差が大きいですが
出産直後から3日間程度は激しい痛みのために、歩くことやベッドの上で
体を動かすことすら難しいケースもあるようです。
1ヶ月健診を受けるころには落ち着いてくる
通常では、広がった恥骨結合は産後1ヶ月ほどで元の距離に戻り
それに伴って痛みも自然となくなっていきます。
まれに骨のつなぎ目が大きく離れすぎたために、
骨と骨とをつなぐ靭帯や周辺組織のダメージが大きくなって、
産後長期間にわたって強い痛みが残るケースもあります。こうした場合、
治療が遅れると痛みが残り、その後の生活に支障をきたすおそれもあります。
痛みは目に見えません。産後に恥骨の痛みを感じた場合は我慢せず、
医師や看護師、助産師などに相談してください。